売り手E医師(50代) | 買い手F医師(40代) | |
事業形態 | 個人開業・内科・無床診療所 | 内科(医療法人) |
M&Aの理由 | 医師として仕事は続けたいが、経営からは手を引きたい。今後の生活資金を確保しつつ、勤務医に戻りたい。 | 愛知への移転をしたかった |
譲渡価格 | 1億円 | |
スキーム | 譲渡価格のみに交渉条件を絞ってマッチング ↓ 事業譲渡を行なう ↓ 従業員との雇用関係についてF医師に一任 |
3ヶ月間の引継ぎ期間 ↓ 自分が働きやすいスタッフを揃えて診察をスタート |
事例Ⅲ解説
個人で内科のクリニックを開業していたE医師は、「診療所経営よりも医療に専念したい」、「純粋に患者のためにだけ働きたい」という思いが年々強くなり、50代でしたがM&Aを決めました。現在は年間で3000万円ほどの利益となっていますが、全盛期には2倍近い利益を出していたため、すでに一定の蓄財もできていました。後はできるだけ家族のために生活資金を確保した上で、自分はボランティアとして世界の国々で医療活動を行いたいとの意向でした。
譲渡価格は当初から1億円と決めており、一切ぶれることはありませんでした。借入金が1000万円ほど残っていましたが、のれん代の上乗せで相殺することができるので問題ありませんでした。
マッチングの相手は民間の病院で勤務する40代のF医師でした。遠方で父親が医療法人としてクリニックを経営していましたが、家族のこともあり生活拠点を移すことはできないので、ご自信は居住地近くでの開業を希望されていました。
E医師の提示した条件が譲渡価格の面だけというシンプルなものであったことなどから、スムーズに交渉はまとまりました。引継ぎ期間は3ヶ月ほどで、週1日程度の代診でクリニックに入ってもらい、徐々に引き継いでいく形をとりました。
短い期間であったにも関わらず、完了でき、双方から喜んでもらうことができましたが、唯一気になったことといえば、従業員の雇用についてです。当方からは承継後の診療をうまく運営していくためにも継続雇用をお勧めしましたが、譲渡条件としては入れていなかったので、最終的にはF医師に一任となりました。結局F医師が自分の目指すスタイルがあるということで、従業員の大半は入れ替えになりました。解雇になる従業員については、E医師が次の就職先を世話する形でフォローがなされています。
【ポイント】
- 売り手の譲渡条件が譲渡価格のみであり、希望価格で売却できた。
- 従業員の雇用は買い手に一任となり、解雇する従業員は売り手が次の就職先をフォローした。
- シンプルな譲渡条件だったため、短期間での承継ができた。